【体験談】障害者グループホームはきついって本当？辞めたいと感じる時とやりがい

障害者グループホームの仕事は「きつい」というイメージがありますが、実際には大変な面だけでなく、大きなやりがいも存在する仕事です。

この記事では、仕事内容の実態、「障害者グループホーム 仕事 きつい」と感じる理由、その一方で得られる魅力や「やりがい」、そして働く上での適性（「向いてない」と感じる場合も含む）について、現場の声やデータに基づき詳しく解説します。

仕事のリアルな情報を知ることで、あなたが障害者グループホームで働くことへの不安を解消し、「未経験」からでも自分に合った働き方かどうかを具体的に判断できるようになります。

筆者の経験について。学生時代に障害者福祉関連のボランティア活動に取り組んでおり、関わりがあった社会福祉法人が運営する知的障害・精神障害者グループホームで、夜勤専従の世話人として計4年4ヶ月の勤務経験がございます。実際に障害者グループホームで世話人として勤務していた経験を踏まえ、障害者グループホームの「きつい」点や仕事のやりがいなど、実体験を交えて記事を作成いたします。

障害者グループホームの仕事内容と「きつい」と言われる背景

障害者グループホームの仕事に対して「きつい」というイメージを持つ方は少なくありません。

その背景には、業務内容や労働環境に関わる具体的な理由が存在することが重要です。

ここでは、障害者グループホームの世話人・支援員の基本的な役割、「仕事がきつい」というイメージが広がる主な理由、そして厚生労働省の調査データから見る人員不足等の実情について詳しく解説します。

仕事内容と「きつい」と言われる背景を正しく理解することは、障害者グループホームの仕事への理解を深め、ご自身に合っているか判断するための第一歩となります。

障害者グループホームの世話人・支援員の基本的な役割

障害者グループホームの世話人や生活支援員は、知的障害や精神障害などを持つ利用者の方々が、地域社会の中で自分らしく、安心して日常生活を送れるようサポートする専門職です。

主な業務内容は、食事の準備や提供、共有スペースの清掃といった家事援助、金銭管理の補助、服薬の声かけや見守り、日々の健康状態のチェック、利用者の方の相談対応や話し相手になること、日中活動先や関係機関との連絡調整など、生活全般にわたります。

グループホームは利用者の方にとっての「家」であり、その暮らし全体を支える非常に身近な存在です。

業務内容	具体的な支援例
家事援助	食事の準備・片付け、掃除、洗濯のサポート
健康管理	服薬の声かけ・見守り、体調確認、通院同行
金銭管理	小遣い帳の記録サポート、計画的な金銭使用のアドバイス
相談・コミュニケーション	日常生活の悩み相談、傾聴、意思決定の支援
関係機関連携	日中活動先、医療機関、相談支援事業所との情報共有
余暇活動支援	外出の付き添い、イベントの企画・実施
緊急時対応	体調急変時の対応、トラブル発生時の対応

利用者一人ひとりの個性や障害特性、心身の状態に合わせて、個別支援計画に基づいたきめ細やかなサポートを提供することが求められます。

「仕事がきつい」というイメージが広がる主な理由

障害者グループホームの仕事が「きつい」というイメージは、残念ながら、いくつかの要因が複合的に絡み合って形成されている側面があります。

例えば、夜間の見守りや緊急対応を含む夜勤業務や、早番・遅番といった不規則な勤務体系による体力的な負担が挙げられます。

また、利用者の方とのコミュニケーションにおける難しさや、予期せぬ行動への対応に伴う精神的なプレッシャーを感じる場面もあります。

少人数の職場環境ゆえの人間関係のストレスや、業務の大変さに対して給与水準が見合わないと感じることも、「仕事がきつい」「辞めたい」と感じる理由として聞かれることがあります。

これらの「きつい」と感じうる理由は、働く前に理解しておくことで、入職後のギャップを減らす助けになります。

厚生労働省の調査データから見る人員不足等の実情

厚生労働省の調査結果は、障害者グループホームが抱える課題、特に「人員不足」の実態を客観的なデータで示しています。

平成30年度に行われた「グループホームを利用する障害者の生活実態に関する調査研究」（※）によると、世話人、生活支援員、夜間支援員のいずれかの職種で人員が「不足している」または「やや不足している」と回答した事業所は約4割にのぼりました。

出典：厚生労働省 平成30年度障害者総合福祉推進事業「グループホームを利用する障害者の生活実態に関する調査研究報告書」

特に夜間支援員の不足感が大きいという結果でした。

令和5年の社会福祉施設等調査においても、共同生活援助（グループホーム）の事業所数は増加傾向にあるものの、現場の人材確保は依然として重要な課題です。

調査項目	主な結果（平成30年度調査より）
人員の不足感	世話人・生活支援員・夜間支援員で約4割の事業所が不足感を回答
人員不足の主な原因	採用が困難（特に世話人等で約8割）、離職率の高さ、事業拡大
採用が困難な主な原因	他産業と比較して労働条件（給与等）が不利（約6割）、福祉人材全体の不足

このような人員不足の状況は、現在働いている職員一人ひとりへの業務負担の増加につながりやすく、「障害者グループホームの仕事はきつい」と感じる背景の一つになっていると考えられます。

出典：厚生労働省 令和5年 社会福祉施設等調査の概況

障害者グループホームの仕事で「きつい」と感じる主な理由とその実態

障害者グループホームの仕事できついと感じる理由は一つではありません。

ここでは、多くの方が「きつい」と感じやすい夜勤業務、利用者の方との関わり、人間関係、待遇面、業務負担、責任の重さ、そして「辞めたい」と感じる瞬間について、その実態を詳しく見ていきましょう。

これらの点を理解することで、ご自身が働くイメージをより具体的に持つことができるはずです。

夜勤業務の内容と体力的な負担感は？

多くの障害者グループホームでは夜勤業務があります。

夜間の利用者さんの見守り、緊急時の対応、排泄介助、服薬管理、翌日の準備など、業務内容は多岐にわたります。

特に人員が少ない事業所では、休憩や仮眠が十分に取れず、体力的な負担を感じやすくなります。

「障害者グループホームの夜勤は大変」という声も聞かれますが、実態はどうなのでしょうか。

夜勤業務の主な内容	体力的な負担を感じやすい点
利用者の見守り、巡視	不規則な睡眠リズムによる疲労蓄積
緊急時対応（体調変化、不穏行動等）	仮眠・休憩が不十分な場合がある
排泄介助、体位交換（必要な場合）	一人での対応が必要な場面がある
服薬管理、就寝・起床準備	日中の疲れが残ったまま夜勤に入ることもある
記録作成、翌日の準備	人員不足による業務量の多さ

はじめこそ、普段と違う環境で寝ることに体力的なきつさはありますが、慣れてからはあまり気になりません。

また、日中とは違う静かな環境で集中して業務に取り組めたりする側面もあります。

利用者とのコミュニケーションにおける難しさ

障害者グループホームでは、知的障害や精神障害など、様々な特性を持つ利用者の方と関わります。

そのため、コミュニケーションに工夫や根気強さが求められる場面が多くあります。

言葉での意思疎通が難しい方、自分の気持ちを表現するのが苦手な方、あるいは感情の起伏が大きい方など、一人ひとりの特性を理解し、その方に合った方法で関わることが大切です。

例えば、精神障害のある利用者の方への対応では、その方の症状や状態の変化に合わせた柔軟な声かけや、安心できる雰囲気作りが求められます。

コミュニケーションで難しさを感じる場面	対応のポイント
言葉での意思疎通が難しい	絵カード、ジェスチャー、表情など非言語的手段の活用
気持ちや要求をうまく伝えられない	根気強く話を聞く姿勢、選択肢の提示
感情の起伏が大きい、不安定になる	落ち着ける環境調整、安心感を与える声かけ
こだわりが強く、受け入れが難しい	背景にある理由を探り、可能な範囲での受容
他の利用者との関係性	双方の気持ちを尊重した仲介、ルール確認

最初は難しく感じても、根気強く関わる中で信頼関係が生まれ、心が通じ合えた時の喜びは大きいものです。

知的障害・精神障害のある方への個別対応と精神的負担

知的障害や精神障害のある利用者の方への支援では、それぞれの障害特性や個別のニーズに合わせた対応が不可欠です。

これを個別支援と呼びます。

例えば、知的障害のある方には、具体的な指示や手順の提示、繰り返し伝えることが有効な場合があります。

精神障害のある方には、幻覚や妄想などの症状に寄り添いながら、現実的な生活への働きかけが必要になることも。

時には、利用者の方の予期せぬ行動や、まれにみられる暴力的な言動（厚生労働省の令和3年度調査では、問題行動のある利用者の存在も指摘されています）に直面し、精神的な負担を感じることもあります。

出典：厚生労働省 令和３年度障害者総合福祉推進事業 グループホームの運営及び支援内容等の実態把握のための調査 事業報告書

「障害者グループホームのトラブル事例」として、こうしたケースが挙げられることもあります。

知的障害のある方への対応例	精神障害のある方への対応例
具体的な言葉で簡潔に伝える	否定せず、まずは気持ちを受け止める
絵や写真など視覚情報を使う	安心できる穏やかな口調で話す
スケジュールを提示し見通しを立てる	症状の変化に気づき、寄り添う
できたことを具体的に褒める	プライバシーに配慮した関わり
パニック時は安全な場所へ誘導	精神科医など関係機関との連携を図る

適切な知識や技術を身につけ、一人で抱え込まずにチームで対応することが、精神的な負担を軽減する鍵となります。

職場での人間関係からくるストレス

障害者グループホームは、比較的少人数の職員で運営されることが多いため、職場の人間関係が業務のしやすさや精神的な負担に大きく影響します。

チームワークが良く、お互いをサポートし合える環境であれば心強いですが、逆に、職員間のコミュニケーション不足や価値観の違い、あるいは一部の職員への業務の偏りなどが、「人間関係のストレス」につながることも少なくありません。

特に、閉鎖的な環境になりがちな職場では、問題が表面化しにくいケースも見られます。

人間関係のストレスを感じやすい要因	対策・ポイント
コミュニケーション不足	定期的なミーティング、情報共有ツールの活用
価値観や支援方針の違い	建設的な話し合い、外部研修への参加
特定の職員への業務負担の偏り	業務分担の見直し、上司への相談
上司や先輩との関係性	相談しやすい雰囲気作り、ハラスメント対策
他職種（サビ管、相談支援専門員等）との連携	役割理解、情報共有の徹底

風通しが良く、困ったときに相談しやすい職場環境かどうかも、仕事を選ぶ上で重要な視点となります。

給与水準や福利厚生などの待遇面

福祉・介護業界全体にいえることですが、仕事内容や責任の重さに対して、給与水準が決して高いとはいえないと感じる方もいます。

厚生労働省の平成30年度調査でも、「他産業と比較して労働条件（賃金等）が不利」であることが、人材確保の大きな課題として挙げられています。

「障害者グループホームの給料は安い」というイメージを持つ方もいるかもしれません。

基本給だけでなく、夜勤手当、資格手当（例：介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士など）、賞与、昇給制度、退職金制度などの有無や内容によって、実際の収入は大きく変わってきます。

待遇面で確認すべきポイント	具体的な内容例
給与体系	基本給、夜勤手当、残業代、賞与（年何回、何か月分）
各種手当	資格手当、役職手当、通勤手当、住宅手当
昇給制度	年1回の定期昇給、評価制度に基づく昇給
福利厚生	社会保険完備、退職金制度、研修費用補助、健康診断
休日・休暇	年間休日数、有給休暇取得率、特別休暇（慶弔等）
休憩時間	夜勤中の仮眠時間を含め、適切に確保されているか

求人情報を見る際は、給与額面だけでなく、手当や福利厚生、昇給の見込みなどを総合的に確認することが大切です。

人員不足や運営方針による業務負担の増加

障害者グループホームの現場では、慢性的な人員不足が課題となっている事業所も少なくありません。

厚生労働省の平成30年度調査では、世話人、生活支援員、夜間支援員で約4割の法人が人員不足を感じていると回答しています。

人員が不足すると、一人ひとりの職員にかかる業務負担が増加し、休憩時間が十分に取れなかったり、残業が増えたりする可能性があります。

「障害者グループホームの離職率が高い」と言われる背景には、こうした状況も影響していると考えられます。

また、事業所の運営方針（例えば、利用者受け入れの基準、支援内容の範囲、効率化への取り組みなど）も、日々の業務負担に大きく関わってきます。

人員不足が引き起こす主な問題点	運営方針で確認したい点
一人当たりの業務量増加	利用者定員と職員数の比率
残業時間の増加、休暇取得の困難	新規利用者の受け入れ基準（障害程度等）
十分な休憩・仮眠が取れない	研修体制やOJT（実務を通じた指導）の充実度
利用者への丁寧な関わりが難しくなる	緊急時の応援体制
精神的・身体的な疲弊、バーンアウト	ICT化など業務効率化への取り組み

人員体制が整っており、職員の負担軽減に配慮した運営方針を持つ事業所を選ぶことが、長く働き続けるためには重要です。

サービス管理責任者（サビ管）の負担と責任

サービス管理責任者（サビ管）は、利用者一人ひとりの個別支援計画の作成を中心に、関係機関との連携調整、他の職員への指導・助言など、多岐にわたる重要な役割を担っています。

利用者の生活全体をコーディネートする立場であり、その責任は非常に大きいと言えます。

特に、人員が不足している事業所では、サビ管自身が現場のシフトに入りながら管理業務もこなすケースも多く、業務負担が過重になりがちです。

「グループホームのサビ管の役割と責任」は重く、専門性の高さが求められる一方で、その負担の大きさから「きつい」と感じる人もいます。

「きつい」だけではない、障害者グループホームの仕事のやりがいと魅力

障害者グループホームのお仕事は、大変な側面がある一方で、他では得難い大きなやりがいや魅力があることも事実です。

利用者さんの日々の変化や成長を間近で支える喜び、一人ひとりのペースに合わせた丁寧な関わりができること、チームで協力して支援目標を達成する充実感、そして障害福祉の専門職としてのスキルアップ機会があることなどが挙げられます。

さらに、利用者さんやそのご家族からの「ありがとう」という感謝の言葉や、社会貢献を実感できる瞬間は、日々の業務の大きな励みとなります。

これらのポジティブな側面が、多くの職員にとって仕事を続ける原動力になっているのです。

利用者の日々の変化や成長を間近で支える喜び

利用者さんの「できた！」が増える瞬間に立ち会えることは、この仕事ならではの大きな喜びと言えます。

グループホームは利用者さんにとっての「家」であり、私たちはその日常生活に深く関わります。

例えば、昨日まで挨拶ができなかった方が「おはよう」と言ってくれたり、一人で着替えができるようになったり、苦手な食材を少しだけ食べられるようになったり。

そんな日々の小さな変化や成長をすぐそばで見守れるのは、かけがえのない経験です。

根気強く関わり続ける中で見られる利用者さんの前向きな変化は、支援する側の心にも温かい光を灯してくれます。

こうした喜びが、たとえ困難な場面があっても、それを乗り越えるための大きな力となります。

一人ひとりのペースに合わせた丁寧な関わり

多くの障害者グループホームは、入所施設などと比較して小規模な体制で運営されています。

そのため、利用者さん一人ひとりの個性や心身の状態、ペースに合わせた丁寧な関わりを実現しやすい環境です。

画一的な対応ではなく、その方の興味や関心、得意なこと、苦手なことに寄り添いながら、個別性の高い支援を考え、実践できます。

例えば、利用者さんの希望に合わせて散歩のコースを変えたり、好きなテレビ番組を一緒に見たり、得意なことを活かせるような活動を取り入れたり。

マニュアル通りではない、温かみのある関わりが可能です。

利用者さんとじっくり向き合い、時間をかけて信頼関係を築いていける点は、この仕事の大きな魅力の一つです。

チームで協力して支援目標を達成する充実感

障害者グループホームの仕事は、決して一人だけで完結するものではありません。

世話人、生活支援員、サービス管理責任者（サビ管）など、様々な職種のスタッフがそれぞれの専門性を持ち寄り、チームとして連携して利用者さんを支えます。

日々の情報共有はもちろん、カンファレンスなどを通じて支援方針を話し合い、協力して目標達成を目指すプロセスには、大きな充実感があります。

利用者さんの課題に対してチームで知恵を出し合い、試行錯誤しながら関わり、良い方向へ向かった時の達成感は格別です。

困難な場面もチームで乗り越えることで、職員同士の絆も深まり、より良い支援へとつながっていきます。

障害福祉の専門職としてのスキルアップ機会

日々の業務を通して、障害特性への理解や個別支援計画の作成、コミュニケーション技術、危機管理能力など、障害福祉の専門職として不可欠な知識やスキルを着実に身につけることができます。

多くの事業所では、内部研修や外部研修への参加を積極的に支援しており、学び続けられる環境が整っています。

また、働きながら介護福祉士や社会福祉士、精神保健福祉士といった専門資格の取得を目指す職員も少なくありません。

資格手当が支給される事業所もあり、スキルアップが給与面に反映されることもあります。

未経験からスタートしたとしても、経験を積み、学びを深めることで、専門職としての自信とやりがいを高めていくことが可能です。

利用者やその家族からの「ありがとう」という言葉

日々の支援の中で、利用者さんやそのご家族からいただく「ありがとう」という感謝の言葉は、何よりも大きな励みになります。

介助を手伝った時、話をじっくり聞いた時、一緒に何かを成し遂げた時など、様々な場面で感謝の気持ちを伝えてもらえる機会があります。

また、ご家族から「いつも丁寧に見てくれてありがとう」「ここに預けて本当に良かった」といった言葉をいただくと、自分の仕事が誰かの支えになっていることを強く実感できます。

時には大変なこともありますが、心からの感謝の言葉に触れると、疲れも和らぎ、「また頑張ろう」という気持ちが湧いてきます。

この「ありがとう」の一言が、仕事を続ける上での大切な原動力となるでしょう。

社会貢献を実感できる瞬間

障害のある方が地域の中で安心して自分らしく暮らしていくことを支える障害者グループホームの仕事は、地域共生社会の実現に貢献する、非常に意義のある役割を担っています。

利用者さんが日中活動に元気に通ったり、地域のお祭りに参加したり、あるいは就労に向けて一歩を踏み出したりする姿を見る時、自分の仕事が社会全体の豊かさにつながっていると感じることができます。

障害のある方の可能性を広げ、地域の一員として活躍できるよう支援することは、大きな喜びであり、社会貢献を実感できる貴重な瞬間です。

この社会的な意義を実感できることは、働く上での大きな誇りとなり、モチベーションを維持する支えとなります。

あなたは向いている？障害者グループホームの仕事と適性

障害者グループホームで働く上で、仕事内容への適性は非常に重要です。

やりがいを感じながら長く働き続けるためには、ご自身の特性や価値観が仕事に合っているかを見極める必要があります。

ここでは、障害者グループホームの仕事に向いている方の特徴、逆に向いていないと感じやすい方の特徴、特別養護老人ホーム（特養）やデイサービスといった他の介護施設との働き方の違い、未経験から転職する際の注意点、そして求められる資格やスキルについて具体的に解説していきます。

これらの情報を参考に、ご自身がこの仕事に向いているかどうか、じっくり考えてみてください。

障害者グループホームの仕事に向いている人の特徴

相手の立場に立って物事を考え、寄り添う姿勢は、障害者グループホームの仕事において最も大切な資質といえます。

利用者さんのペースに合わせ、根気強く関わり続けることが求められます。

具体的には、以下のような特徴を持つ方は、障害者グループホームの仕事でやりがいを感じやすいでしょう。

特徴	理由
共感力・傾聴力が高い	利用者さんの気持ちを理解し、思いを受け止める姿勢が信頼関係の基盤となる
忍耐力・精神的な安定性	利用者さんの言動に一喜一憂せず、落ち着いて対応できる。予期せぬ出来事にも冷静に対処する力
観察力・洞察力がある	利用者さんのわずかな変化に気づき、適切なサポートにつなげることができる
コミュニケーション能力	利用者さんだけでなく、そのご家族や他の職員、関係機関と円滑に連携するために不可欠
体力がある	夜勤や、場合によっては入浴・移動などの身体的な介助も含まれるため、一定の体力が必要
チームワークを大切にする	少人数の職員で協力し、情報を共有しながら支援を進める姿勢が求められる
人の役に立ちたい気持ち	利用者さんの自立や地域生活を支えることに喜びを感じられる。「人の役に立ちたい」という動機は強みになる

これらの特徴は、日々の業務を通じてさらに伸ばしていくことも可能です。

特に、利用者さんの小さな成長や変化を喜びと感じられる方は、充実感を得やすい仕事といえます。

「向いてないかも」と感じやすい人の特徴

一方で、ご自身の特性によっては、障害者グループホームの仕事に「向いてない」と感じてしまう可能性もあります。

事前に自己分析をしておくことが大切です。

以下のような特徴に当てはまる場合は、少し立ち止まって考えてみる必要があるかもしれません。

特徴	理由
すぐに成果や結果を求める	利用者さんの変化はゆっくりな場合が多く、長期的な視点での関わりが求められるため、焦りを感じやすい
マニュアル通り、決まった作業を好む	利用者さんの状態や状況に応じて、臨機応変な対応が求められる場面が多い
変化への対応が苦手	利用者さんの体調や気分の波、予期せぬ出来事など、日々変化があるため、柔軟性が求められる
感情移入しすぎる、引きずられやすい	利用者さんの状況に共感することは大切ですが、感情的に距離を保てないと精神的に疲弊しやすい
問題を一人で抱え込みがち	チームでの連携が不可欠なため、相談せずに一人で解決しようとすると、負担が大きくなり、適切な支援につながらないことがある
コミュニケーションが極端に苦手	利用者さん、ご家族、職員間の意思疎通が重要となるため、基本的なコミュニケーション力は必要
体力や精神力に自信がない	夜勤や不規則な勤務、精神的なプレッシャーもあるため、心身ともに健康であることが望ましい
不規則な勤務形態が合わない	シフト制勤務、特に夜勤が負担に感じる場合は、継続が難しい場合がある

もし「向いてないかも」と感じる点があっても、それが必ずしも適性がないということではありません。

しかし、これらの傾向が強い場合は、仕事の「きつい」側面をより強く感じてしまうかもしれません。

特別養護老人ホームやデイサービス等、他の介護施設との違い

障害福祉や介護の仕事には、障害者グループホーム以外にも様々な施設やサービスがあります。

それぞれに特徴があり、働き方も異なります。

ここでは、代表的な「特別養護老人ホーム（特養）」と「デイサービス」と比較してみましょう。

障害者支援施設との違いも意識すると、グループホームの特徴がより明確になります。

施設種類	主な対象者	サービス提供の場・時間	主な目的・役割	関わり方の特徴
障害者グループホーム	知的・精神障害者等	利用者の「家」（24時間365日）	地域での共同生活支援、自立支援、日常生活のサポート	家庭的な雰囲気の中、少人数で密な関わり。一人ひとりのペースに合わせた個別支援が中心。
特別養護老人ホーム	要介護高齢者	入所施設（24時間365日）	日常生活全般の介護、看取りケア	比較的大規模で、多くの利用者さんをケア。身体介護の比重が高い傾向。多職種連携によるチームケア。
デイサービス	要支援・要介護高齢者等	通所施設（日中のみ）	機能訓練、入浴・食事等の介護、社会的交流の促進、家族の介護負担軽減	日中の限られた時間での関わり。レクリエーションや集団活動が多い。送迎業務があることも。利用者さんの自宅での生活を支える視点が重要。
障害者支援施設	障害者	入所施設（24時間365日）	生活介護、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援等、グループホームより多様な機能を持つことがある	比較的規模が大きく、より専門的なケアや訓練が必要な方が利用することが多い。グループホームより集団的な生活の側面が強い場合がある。日中活動と居住支援が一体の場合も。

このように、グループホームは利用者さんの「家」として、より個別的で家庭的な支援を行う点が特徴です。

ご自身がどのような環境で、どのように利用者さんと関わりたいかを考える上で、これらの違いを理解しておくことは重要です。

未経験から障害者グループホームへ転職する際の注意点

障害者グループホームの未経験求人は多く、福祉や介護の経験がない方でも挑戦しやすい職種の一つです。

しかし、転職を成功させ、長く働き続けるためには、いくつか注意しておきたい点があります。

安易な転職理由ではなく、しっかりと準備を進めることが大切です。

未経験から転職する際に、特に意識したいポイントは以下の通りです。

注意点	具体的な行動・確認事項
研修・教育体制の確認	入職後の研修内容、OJT（実務を通じた指導）の有無や期間、独り立ちまでのサポート体制などを面接で具体的に確認する
仕事内容（特に夜勤）への理解	求人情報だけでなく、見学や面接を通じて、具体的な業務内容、夜勤の頻度や体制、休憩・仮眠の実態などを把握する。体力的な負担についても理解しておく
精神的な負担への覚悟	利用者さんとのコミュニケーションの難しさや、時には予期せぬ行動への対応など、精神的な負担が生じる可能性を理解し、ストレス対処法を考えておく
体力・精神面の自己分析	不規則な勤務や夜勤に対応できる体力があるか、ストレス耐性はどの程度かなど、自身の心身の状態を客観的に見つめ直す
情報収集と比較検討	複数の事業所の求人情報や口コミ、運営方針などを比較検討する。可能であれば、事前に施設見学を申し込み、実際の雰囲気を確認する
「なぜこの仕事か」の明確化	漠然とした憧れだけでなく、「なぜ障害者グループホームで働きたいのか」「この仕事を通して何を実現したいのか」を具体的に言語化しておく（面接対策にもなる）
給与・待遇面の確認	基本給だけでなく、夜勤手当、資格手当、賞与、昇給制度、福利厚生などを詳しく確認する。納得できる条件かどうかを見極める
人間関係についての情報収集（可能な範囲で）	見学時の職員の様子や、面接官の雰囲気などから、職場の人間関係を推測する。ただし、入職してみないと分からない部分も大きいことは認識しておく

未経験者であることを前提とした丁寧な研修やサポート体制が整っている事業所を選ぶことが、スムーズなスタートを切るための鍵となります。

焦らず、一つひとつ知識やスキルを身につけていく姿勢が大切です。

求められる資格やスキル

障害者グループホームで働く上で、必ずしも特定の資格が必須というわけではありません。

無資格・未経験からスタートできる求人も多くあります。

しかし、持っていると業務に役立ち、資格手当などで給与面でも有利になる資格や、仕事をする上で求められるスキルがあります。

カテゴリ	具体例	備考
役立つ資格	介護福祉士	国家資格。介護に関する専門知識・技術の証明。資格手当の対象となることが多い。
	社会福祉士	国家資格。福祉全般に関する相談援助の専門職。
	精神保健福祉士	国家資格。精神障害者の保健・福祉に関する専門知識・技術を持つ専門職。
	介護職員初任者研修（旧ホームヘルパー2級）	介護の入門資格。無資格者向けの研修として受講しやすい。
	実務者研修	介護福祉士国家試験の受験要件の一つ。より実践的な知識・技術を習得。
	強度行動障害支援者養成研修	強度行動障害のある方への適切な支援方法を学ぶ研修。
	普通自動車運転免許	利用者さんの送迎や買い物代行などで必要となる場合がある。
求められるスキル	コミュニケーション能力	利用者さん、家族、他職員との円滑な意思疎通。非言語的なサインを読み取る力も含む。
	観察力	利用者さんの小さな変化（体調、気分、行動など）に気づく力。
	共感力・傾聴力	相手の気持ちに寄り添い、話を丁寧に聞く姿勢。
	忍耐力・精神的なタフさ	根気強く関わる力、ストレスやプレッシャーに対処する力。
	問題解決能力・判断力	予期せぬ状況やトラブル発生時に、冷静に状況を分析し、適切な対応を判断・実行する力。
	チームワーク・協調性	他の職員と協力し、情報を共有しながら目標に向かう力。
	基本的なPCスキル	支援記録の入力などで必要となる場合がある。
	体力	夜勤や身体的な介助に対応できる体力。

資格は入職後に取得を目指せる場合も多く、研修制度が整っている事業所もあります。

スキルについても、日々の業務を通して経験を積むことで高めていくことが可能です。

まずは、人と関わることが好きで、相手を思いやる気持ちを持っていることが大切です。

障害者グループホームの仕事への理解を深め、次のステップへ

障害者グループホームの仕事に対して、「きつい」というイメージから不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

大切なのは、断片的な情報に惑わされず、仕事の実態や自分との相性を正しく理解することです。

このセクションでは、「暴力や激務」といったイメージの検証、ストレスとの向き合い方、働きやすい職場の見つけ方、求人情報の確認ポイント、事前の情報収集の重要性、そして働く上での心構えとキャリアパスについて、具体的に解説していきます。

これらの情報を通して、漠然とした不安を解消し、ご自身にとって最適な一歩を踏み出すためのヒントを見つけていただければ幸いです。

正しい知識と準備をもって臨めば、障害者グループホームの仕事は大きなやりがいを感じられるものとなるはずです。

「暴力が日常的」「常に激務」は本当か？実態の検証

「障害者グループホームの仕事は、利用者からの暴力が絶えず、常に人手不足で激務」といった強いイメージを持たれることがあります。

しかし、これは全ての事業所に当てはまるわけではありません。

厚生労働省の調査（平成30年度）によると、グループホーム事業所の約4割が世話人や夜間支援員などの人員不足を感じているというデータがあります。

人員不足が原因で「採用が困難」であること、特に「他の産業と比較して労働条件が不利」と感じられている現状が、激務のイメージにつながっている可能性はあります。

一方で、「暴力が日常的」というのは極端なイメージであり、多くの事業所では利用者との穏やかな関わりが中心です。

もちろん、利用者の方の特性によっては、予期せぬ行動や、まれに他害・自傷行為に至るケースもありますが、その頻度や程度、そして事業所側の対応策や研修体制は様々です。

大切なのは、「常にそうである」という思い込みを捨て、事業所ごとの実態を見極めることです。

運営法人の方針や、利用者の方々の障害特性、職員体制によって、状況は大きく異なります。

ストレスとの上手な向き合い方とバーンアウトの予防策

対人援助の仕事には、バーンアウト（燃え尽き症候群）のリスクが伴います。

バーンアウトとは、意欲的に仕事に取り組んでいた人が、心身の極度の疲労により、あたかも燃え尽きたかのように意欲を失ってしまう状態を指します。

障害者グループホームの仕事でも、日々の利用者対応や人間関係、業務負担などからストレスを感じ、バーンアウトに至る可能性は誰にでもあります。

重要なのは、ストレスを溜め込まず、早期に対処することです。

ストレスサインの例	具体的な対処法・予防策の例
寝つきが悪い、途中で起きる	十分な睡眠時間の確保、リラックスできる環境づくり
食欲がない、または過食気味	バランスの取れた食事、気分転換になる食事
イライラしやすい、落ち込む	信頼できる人への相談、相談窓口の活用
仕事に行くのが億劫になる	休暇の取得、業務負担の調整相談
集中力が続かない、ミスが増える	休息時間の確保、タスクの見直し
楽しみを感じられない	趣味や好きなことに打ち込む時間の確保

自分なりのストレス解消法（例：趣味の時間、運動、友人との会話）を見つけ、意識的にリフレッシュする時間を確保することが大切です。

また、仕事の悩みを一人で抱え込まず、同僚や上司、サービス管理責任者などに相談できる環境であるかどうかも重要になります。

セルフケアを意識し、助けを求めることをためらわない姿勢が、長く健康に働き続けるための鍵となります。

事業所によっては、ストレスチェックの実施や相談窓口の設置など、職員のメンタルヘルスケアに取り組んでいる場合もあります。

働きやすい職場環境や事業所の見つけ方

障害者グループホームで長く働き続けるためには、自分に合った働きやすい職場環境を見つけることが非常に重要です。

「きつい」と感じるかどうかは、仕事内容だけでなく、職場の雰囲気や人間関係、運営方針に大きく左右されます。

働きやすい職場を見つけるためには、求人情報だけでは分からない「事業所の内情」を知るための情報収集が欠かせません。

具体的には、運営法人の方針や理念、人員配置の状況（特に夜勤体制や休憩時間の確保）、研修制度や資格取得支援の有無、職員同士のコミュニケーションの様子、管理者のリーダーシップなどを確認することがポイントになります。

働きやすい事業所のチェックポイント例	確認方法の例
運営法人の理念や方針への共感	Webサイト、パンフレット、面接での質問
十分な人員配置と休憩時間の確保	面接での質問、施設見学時の観察
充実した研修制度・資格取得支援	求人情報、面接での質問
風通しの良いコミュニケーション	施設見学時の職員の様子、面接での質問
残業時間の実態	面接での質問、可能であれば現職職員への質問
利用者への丁寧な関わり	施設見学時の観察、事業所の評判
相談しやすい環境	面接での質問（相談体制、面談頻度など）
福利厚生（休暇制度、手当など）	求人情報、面接での質問

一つの情報源だけでなく、複数の情報源（Webサイト、求人票、口コミサイト、施設見学、面接など）から多角的に情報を集め、比較検討することが大切です。

自分に合った職場環境を見極めることが、障害者グループホームの仕事でやりがいを感じながら働き続けるための第一歩となります。

求人情報の見方と面接での確認ポイント

求人情報は、自分に合った職場を見つけるための最初のステップであり、その見方には注意が必要です。

給与や勤務地だけでなく、具体的な仕事内容、勤務時間（特に夜勤の有無や時間帯）、休日、福利厚生（社会保険、退職金、住宅手当など）、そして研修制度や資格手当についてもしっかり確認しましょう。

「未経験者歓迎」とあっても、どのようなサポート体制があるのかを具体的にイメージできる情報が記載されているかを見ることも大切です。

しかし、求人情報だけでは分からない部分も多くあります。

そこで重要になるのが面接での確認です。

面接は、企業側があなたを選ぶだけでなく、あなたが企業を選ぶ場でもあります。

入社後のミスマッチを防ぐため、気になる点や不安な点は積極的に質問しましょう。

これらの質問を通して、求人情報だけでは見えにくい職場のリアルな情報を引き出すことができます。

入社後のギャップをできるだけ少なくすることが、安心して新しい仕事をスタートするために不可欠です。

事前の施設見学や情報収集の重要性

求人情報やWebサイトだけでは分からない職場の実態を知る上で、事前の施設見学は非常に有効な手段です。

実際に足を運び、自分の目で見ることで、施設の雰囲気、清潔さ、設備、働いている職員の方々の表情や利用者さんとの関わり方などを肌で感じることができます。

これは、文章や写真だけでは伝わらない、生きた情報です。

見学時には、案内担当者に積極的に質問するだけでなく、掲示物（行事予定、研修報告など）や職員間のコミュニケーションの様子にも注目してみましょう。

また、施設見学以外にも、事業所のWebサイトを隅々まで確認したり、ハローワークや福祉系の就職フェアで情報を集めたり、可能であればその事業所で働いている（いた）人の口コミを探したりすることも有効です。

手間はかかりますが、こうした入念な情報収集と施設見学が、入社後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防ぎ、納得のいく職場選びにつながります。

実際に見て、聞いて、感じたことを大切に、最終的な判断を下すことが重要です。

働く上での心構えとキャリアパス

障害者グループホームで働く上では、利用者の方一人ひとりの尊厳を守り、その人らしい暮らしを支えるという心構えが何よりも大切です。

支援は、職員主体ではなく、あくまで利用者主体で進められるべきです。

また、仕事は一人で行うものではなく、世話人、生活支援員、サービス管理責任者（サビ管）など、チームで連携・協力して進めることが不可欠です。

他の職員と積極的にコミュニケーションを取り、情報を共有し、互いにサポートし合う姿勢が求められます。

加えて、障害福祉の分野は制度改正も多く、新しい知識や技術が次々と出てくるため、常に学び続ける意欲も重要になります。

働きながらキャリアパスを考えることも大切です。

経験を積みながら、以下のような資格を取得することで、専門性を高め、キャリアアップを目指すことができます。

未経験からスタートしても、経験を積み、資格を取得することで、より責任のある立場を目指したり、給与アップ（資格手当など）につなげたりすることが可能です。

利用者の方の成長を支えたいという思いと、自分自身も成長していこうという前向きな姿勢が、この仕事のやりがいを深め、長く働き続けるための力となります。

よくある質問（FAQ）

まとめ

この記事では、障害者グループホームの仕事が「きつい」と言われる理由とその実態、一方で得られる「やりがい」や魅力、そして働く上での適性について詳しく解説しました。

仕事のリアルな情報を知ることで、あなたがこの仕事に挑戦するかどうかの判断材料を提供します。

この記事を参考に、ご自身の適性を見つめ直し、施設見学などを通して実際の職場環境を確認することが、納得のいく選択への第一歩です。

不安な点は面接でしっかり質問し、あなたに合った働き方を見つけてください。