介護福祉士の仕事内容について、特別養護老人ホーム(特養)やデイサービスといった施設ごとの1日の流れから、具体的な業務、チームでの役割分担、さらには仕事のやりがいや大変さまで、詳しく解説します。
「介護の仕事って具体的にどんなことをするの?」
「施設によって違いはある?」
「自分に向いているかな?」
といった疑問や不安を感じているみなさん、この記事を読めば、介護福祉士のリアルな姿がわかり、自分らしい働き方を見つけるヒントが得られます。

学校で習う知識だけだと、実際の現場の仕事がイメージできないな…

大丈夫ですよ。この記事では、具体的な仕事内容や施設ごとの1日の流れを詳しくお伝えします
- 介護福祉士の具体的な仕事内容と施設による違い
- 特養・老健・デイサービスなど施設ごとの1日の流れ
- 仕事のリアルなやりがいと大変さ
- 資格取得の方法と将来のキャリアプラン
【働く場所で違う】介護福祉士の仕事内容は?具体的な業務と施設ごとの特徴
介護福祉士の仕事は、働く場所によって求められる役割や業務内容が大きく異なります。
自分に合った働き方を見つけるためには、施設ごとの特徴を理解することが非常に重要です。
ここでは、介護福祉士の主な仕事内容である「身体介護」「生活援助」「相談・助言業務」という3つの柱から、記録やレクリエーション、見守りといった具体的な業務、さらに施設形態による仕事内容の違い、病院や障害者支援施設での役割まで詳しく解説します。
これらの情報を知ることで、介護福祉士として働くイメージがより具体的になり、ご自身の興味や適性に合った職場選びの助けとなるでしょう。
介護福祉士の主な仕事内容は?業務の3つの柱を紹介
介護福祉士の仕事は多岐にわたりますが、その中核をなすのは「身体介護」「生活援助」「相談・助言業務」の3つの柱です。
これらは利用者の尊厳を守り、自立した生活を支えるために欠かせません。
身体介護では食事や入浴などの直接的な介助を、生活援助では掃除や調理などの日常生活のサポートを行います。
加えて、利用者や家族の精神的な支えとなる相談・助言業務も重要な役割です。
これらの業務を通じて、利用者が安心して快適な生活を送れるよう支援することが、介護福祉士の使命といえます。
身体介護の具体的な介助内容(入浴・食事・排泄・移乗)
身体介護とは、利用者の身体に直接触れて行う日常生活動作のサポートを指します。
これは介護福祉士の専門性が活かされる重要な業務の一つです。
具体的には、入浴介助(洗身、洗髪、更衣の手伝い)、食事介助(配膳、食事中の見守り、摂取量の確認、口腔ケア)、排泄介助(トイレへの誘導、おむつ交換、陰部洗浄)、移乗介助(ベッドから車椅子への乗り移りなど)といった介助が含まれます。
単に動作を手伝うだけでなく、利用者の状態を観察し、安全に配慮しながら、その人らしい生活が継続できるよう支援することが大切です。
利用者の羞恥心に配慮し、尊厳を守る姿勢も求められます。

身体介護って、具体的にどんなことをするの?

利用者の体に直接触れて、日常生活動作をサポートすることですよ。
【生活援助】利用者が自立した日常生活を送るためのサポートを行う
生活援助は、利用者が自宅などで自立した日常生活を送れるように、身体介護以外の身の回りのサポートを行うことです。
介護保険サービスにおける生活援助は、利用者本人が家事を行うことが難しい場合に提供されます。
具体的な業務内容としては、居室の掃除、洗濯、ベッドメイク、一般的な調理、食材や日用品の買い物代行、薬の受け取り代行などが挙げられます。
ただし、利用者本人以外のための家事(家族の分の調理など)や、日常的な家事の範囲を超える行為(庭の手入れ、大掃除など)は生活援助の対象外です。
利用者の生活環境を整え、快適に過ごせるよう支援することが目的となります。
【相談・助言業務】介護の専門知識に基づき利用者や家族へのアドバイスを送る
相談・助言業務は、利用者本人やその家族が抱える介護に関する悩みや不安に寄り添い、精神的なサポートを行うとともに、必要な情報提供やアドバイスを行う重要な役割を担います。
介護に関する専門的な知識に基づき、利用者の心身の状況や生活環境に応じたアドバイスを行います。
例えば、介護保険サービスの利用方法の説明、福祉用具の選定に関する助言、他の専門職(ケアマネージャーや医療従事者など)との連携の橋渡しなどが含まれます。
日々のコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、利用者が安心して生活を送れるよう精神的に支えることも、介護福祉士の大切な仕事の一つです。
【記録と介護計画作成】介護の質向上のために具体的なケアプランを作成
介護記録は、日々のケア内容、利用者の心身の状態、行った援助などを詳細かつ正確に記録することを指します。
一方、介護計画(個別援助計画)は、アセスメント(情報収集・課題分析)に基づき、利用者一人ひとりのニーズや目標に合わせた具体的なケアプランを作成することです。
記録は、ケアの経過を把握し、多職種間で情報を共有するために不可欠であり、ケアの継続性や一貫性を保つ上で重要な役割を果たします。
介護計画は、この記録やアセスメントをもとに定期的に見直され、ケアの目標達成度を評価し、必要に応じて修正されます。
これらを通じて、質の高い、根拠に基づいたケアを提供することを目指します。
【レクリエーション】利用者のQOL向上のために様々な活動を企画・実施
レクリエーションは、利用者の生活の質を高めることを目的とした、楽しみながら行える活動のことです。
単なる遊びではなく、心身機能の維持・向上、他者との交流促進、精神的な安定、閉じこもり防止といった多様な効果が期待されます。
体操、歌、ゲーム、工作、園芸、書道、外出イベントなど、様々な種類の活動があります。
介護福祉士は、利用者の興味関心、身体状況、認知機能などを考慮し、安全に配慮しながら、参加者が楽しめるレクリエーションを企画・実施します。
活動を通じて利用者の笑顔を引き出し、生きがいや楽しみを見出す手助けをすることも大切な役割です。
【見守りと声かけ】安心して生活できる安全な環境づくり
見守りは、利用者のそばにいて、転倒や体調の急変などの異変がないか常に注意を払い、安全を確保することです。
また、声かけは、利用者に安心感を与え、コミュニケーションを促進し、精神的な安定を図るための重要な関わりとなります。
特に、認知症の方や移動に介助が必要な方にとっては、事故防止の観点から見守りが欠かせません。
「変わりないですか?」「何かお手伝いしましょうか?」といった積極的で温かい声かけは、利用者の孤独感を和らげ、信頼関係を築くきっかけにもなります。
介護福祉士は、利用者が不安なく、穏やかに過ごせるような環境づくりを、見守りと声かけを通じて行います。
施設形態別の仕事内容比較(特養・老健・デイサービス・訪問介護・グループホーム等)
介護福祉士が活躍する場は多岐にわたり、施設の種類によって提供するサービス内容や利用者の状態、求められる役割が異なります。
それぞれの特徴を理解し、比較検討することが大切です。
施設形態 | 主な特徴 | 主な仕事内容 |
---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 原則要介護3以上の高齢者が入居する終身利用型の施設 | 24時間体制での身体介護(食事、入浴、排泄介助)、生活援助、看取りケア、レクリエーション、健康管理補助 |
介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指すリハビリテーション中心の施設 | 身体介護、リハビリテーション補助、在宅復帰支援、医療ケア補助、多職種連携 |
デイサービス(通所介護) | 日帰りで施設に通い、サービスを受ける | 入浴介助・食事介助、機能訓練、レクリエーションの企画・実施、送迎業務 |
訪問介護 | 利用者の自宅を訪問してケアを提供する | 身体介護、生活援助(掃除、洗濯、調理、買い物代行など)、通院等の付き添い |
グループホーム | 認知症高齢者が少人数で共同生活を送る施設 | 身体介護、生活援助、認知症ケア(見守り、コミュニケーション)、共同生活のサポート(調理や掃除を利用者と一緒に行う) |

施設によって、そんなに仕事内容が違うの?

そうなんです。働く場所で求められる役割や専門性が異なりますよ。
このように、施設形態によって業務内容や働き方が大きく変わるため、自分の関心やキャリアプランに合った職場を選ぶことが、やりがいを持って長く働き続けるための鍵となります。
病院や障害者支援施設における介護福祉士の役割
介護福祉士の活躍の場は、高齢者福祉施設だけにとどまりません。
病院や障害者支援施設でも、その専門性を活かして重要な役割を担っています。
病院では、主に療養病棟や回復期リハビリテーション病棟などで、入院患者さんの療養上の世話(身体介護、食事・入浴・排泄の介助、ベッドメイキングなどの環境整備)や、看護師の補助業務を行います。
医療チームの一員として、患者さんの日常生活を支えます。
障害者支援施設では、身体障害、知的障害、精神障害など、様々な障害のある方の日常生活の支援(身体介護、生活援助)、日中活動のサポート、就労支援、社会参加の促進などを行います。
利用者一人ひとりの特性やニーズに合わせた個別支援計画に基づき、自立した生活や社会参加をサポートすることが求められます。
どちらの現場でも、対象となる方の状態や必要な支援は異なりますが、その人らしい生活を尊重し、尊厳を守りながら質の高いケアを提供するという、介護福祉士としての基本的な姿勢や倫理観は共通して求められます。
介護福祉士の1日の仕事内容は?施設ごとのスケジュール例を紹介
介護福祉士の働く場所によって、1日の仕事の流れは大きく異なります。
それぞれの施設形態には特徴があり、求められる役割や業務内容、勤務時間帯も様々です。
ここでは、代表的な施設である特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイサービス、訪問介護事業所での具体的なスケジュール例を紹介します。
さらに、交代制勤務における夜勤やシフト制の実態についても解説します。
これらの情報を通して、ご自身が介護福祉士として働く姿を具体的にイメージし、どのような環境が合っているか考えるための参考にしてください。
特別養護老人ホーム(特養)での1日の流れ
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上の、常時介護が必要で自宅での生活が困難な高齢者が終身にわたり入居する生活施設です。
寝たきりの方や認知症の方も多く利用されています。
24時間体制でケアを提供するため、介護福祉士は早番・日勤・遅番・夜勤のシフト制で勤務することが一般的です。
利用者の方の生活全般を長期的にサポートする役割を担います。
以下は、日勤帯の介護福祉士のスケジュール例です。
出勤、夜勤スタッフからの申し送り、当日のスケジュール確認
入居者の起床介助(着替え、整容)、バイタルチェック
入浴介助、排泄介助(おむつ交換など)、水分補給
昼食の配膳、食事介助、服薬介助
口腔ケア、休憩、介護記録の作成
レクリエーション活動の実施、排泄介助
おやつ提供、入居者とのコミュニケーション、見守り
記録作成、ケアカンファレンスへの参加、申し送り準備
遅番スタッフへの申し送り
退勤

特養って、利用者さんとずっと一緒にいられるイメージだけど、実際はどんな感じなのかな?

入居者の方の生活に深く寄り添い、日々の変化を見守りながらケアできるのが特養の特徴ですよ
特養では、入居者一人ひとりの状態や生活リズムに合わせた個別ケアの実践が重要になります。
特に、身体介護(入浴介助、食事介助、排泄介助など)のスキルや、長期的な関係性を築くコミュニケーション能力が求められます。
介護老人保健施設(老健)での1日の流れ
介護老人保健施設(老健)は、病状が安定期にある要介護高齢者に対し、医学的管理下での介護や看護、リハビリテーションを提供し、在宅復帰を目指す施設です。
入所期間は原則3~6ヶ月とされています。
特養と同様に24時間体制のケアを提供しますが、医師や看護師、リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)など、多職種との連携がより密接になります。
以下は、日勤帯の介護福祉士のスケジュール例です。
出勤、申し送り、情報収集、リハビリスタッフとの情報共有
利用者の起床介助、整容、バイタルチェック
入浴介助、排泄介助、リハビリテーション室への誘導・見守り
昼食の配膳、食事介助、服薬介助(看護師と連携して行うことも)
口腔ケア、休憩、記録作成、多職種カンファレンスへの参加
集団レクリエーションの実施、個別機能訓練の補助
おやつ提供、排泄介助
記録作成、家族への連絡・相談対応、申し送り準備
遅番スタッフへの申し送り
退勤
老健では、利用者の「在宅復帰」という明確な目標に向けて、チームアプローチが非常に重要になります。
介護福祉士は、日常生活のケアだけでなく、リハビリ意欲を高める声かけや、他職種との情報共有を通じて、利用者の機能回復を支援します。
デイサービス(通所介護)での1日の流れ
デイサービス(通所介護)は、自宅で生活する要支援・要介護の高齢者が、日帰りで施設に通い、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練、レクリエーションなどを受けるサービスです。
介護福祉士は、利用者の送迎業務から、施設内での様々なケア、レクリエーションの企画・実施まで幅広く担当します。
基本的に夜勤はなく、日中のみの勤務となることが多いです。
以下は、典型的なスケジュール例です。
出勤、朝礼、当日の利用者情報・送迎ルートの確認
利用者宅への送迎(運転または添乗)
利用者到着、お茶出し、バイタルチェック、健康状態のヒアリング
入浴介助、個別機能訓練の補助、手芸などの個別活動サポート
昼食の配膳、食事介助、見守り
口腔ケア、休憩時間
集団レクリエーション(体操、ゲーム、歌など)の実施
おやつ提供、利用者との歓談
利用者の帰宅準備、持ち物確認、記録作成
利用者宅への送迎(運転または添乗)
帰着、施設内の清掃・片付け、翌日の準備、退勤

デイサービスはレクリエーションが多そうで楽しそう!

そうですね、利用者さんに笑顔で一日を過ごしてもらえるよう、楽しんでもらえる企画を考えるのも大切な仕事です
デイサービスでは、利用者が自宅での自立した生活を続けられるように支援するとともに、他者との交流の機会を提供し、社会的な孤立感を軽減する役割も担っています。
コミュニケーション能力やレクリエーションスキルが活かせる職場です。
訪問介護事業所での1日の流れ
訪問介護事業所に所属する介護福祉士(ホームヘルパーとも呼ばれます)は、利用者の自宅を直接訪問し、ケアプランに基づいた身体介護(食事、入浴、排泄の介助など)や生活援助(調理、掃除、洗濯、買い物代行など)を提供します。
1日に数件の利用者宅を訪問するため、効率的な移動と時間管理が重要になります。
基本的に一人でサービスを提供しますが、事業所のサービス提供責任者と常に連携を取ります。
以下は、ある訪問介護員のスケジュール例です。
出勤、事務所でのミーティング、当日のスケジュール・利用者情報の最終確認
利用者A宅へ移動(自転車や自動車など)
利用者A宅:起床介助、整容、朝食の準備・介助、服薬確認
利用者B宅へ移動
利用者B宅:入浴介助、または清拭(身体の清潔保持)
昼食休憩、移動
利用者C宅:昼食後の片付け、掃除機かけ、洗濯物干し(生活援助)
利用者D宅へ移動
利用者D宅:排泄介助(トイレ誘導、おむつ交換)、体位変換
事業所へ移動
事業所での介護記録の作成・提出、サービス提供責任者への報告・相談、翌日の準備
退勤

一人で利用者さんのお宅に行くのは、ちょっと緊張するかも…

最初は先輩ヘルパーが同行して指導しますし、困ったときはすぐに事業所に電話で相談できる体制があるので安心してください
訪問介護では、利用者の住み慣れた環境で、その人らしい生活を継続できるようサポートします。
個別のニーズに合わせた柔軟な対応力や、利用者・家族との信頼関係を築くコミュニケーション能力が特に重要になります。
夜勤がある場合のスケジュール例
特別養護老人ホームや介護老人保健施設のような24時間体制でケアを提供する入所施設では、夜勤業務は欠かせません。
日中の喧騒が落ち着いた夜間帯に、利用者の安全を見守り、必要なケアを提供します。
夜勤は通常、夕方から翌朝までの長時間勤務となることが多く、例えば「16:30から翌朝9:00まで」といった16時間以上の勤務(うち休憩1~2時間)が一般的です。
日中よりも少ない職員数で対応するため、責任も大きくなります。
以下は、特養での夜勤のスケジュール例です。
出勤、日勤スタッフからの詳細な申し送り、利用者情報の確認
夕食の配膳、食事介助、服薬介助、食後の口腔ケア
就寝準備(パジャマへの更衣介助、トイレ誘導、おむつ交換)
消灯、利用者への声かけ、フロアの見回り開始
定期的な巡視(例:2時間ごと)、体位変換、おむつ交換、ナースコール対応、緊急時対応、介護記録の作成、休憩(他の夜勤者と交代で取得)
起床時間の利用者の起床介助、整容、更衣介助、排泄介助
朝食の配膳、食事介助、服薬介助
早番スタッフへの詳細な申し送り、夜間の様子の報告
退勤(勤務終了)

夜勤って、眠くならないですか? 体力的にきつそう…

仮眠時間はありますが、確かに体力は必要です。日中の過ごし方や食事など、生活リズムを整える自己管理が大切ですね
夜勤帯は、利用者の急変や緊急事態が発生する可能性もゼロではありません。
そのため、介護福祉士には、利用者の状態を注意深く観察する力、冷静な判断力、そして迅速な対応能力が求められます。
夜勤手当が支給されることが一般的です。
シフト制勤務の実態
入所施設や一部の通所・訪問系サービスでは、利用者に継続的なケアを提供するためにシフト制勤務が採用されています。
これにより、24時間365日、切れ目のないサービス提供体制を維持しています。
シフトは主に「早番」「日勤」「遅番」「夜勤」の4つに区分され、それぞれの時間帯で担当する業務内容が異なります。
施設や事業所の運営方針、人員体制によって、具体的な勤務時間やシフトの組み合わせ(例:「日勤→遅番→休み→早番→夜勤」など)は様々です。
シフト例 | 勤務時間帯の例 | 主な業務時間帯と内容のイメージ |
---|---|---|
早番 | 7:00~16:00 | 起床介助、朝食関連、午前中のケア(入浴介助など)、日勤への申し送り |
日勤 | 8:30~17:30 または 9:00~18:00 | 日中のケア全般、機能訓練やレクの実施、記録作成、カンファレンス参加 |
遅番 | 11:00~20:00 または 13:00~22:00 | 午後のケア、夕食関連、就寝準備、夜勤への申し送り |
介護福祉士の役割と連携!チームで支えるケアが不可欠
介護の現場では、多様な専門職が連携して利用者を支えるチームケアが不可欠です。
介護福祉士は、そのチームの中心的な役割を担う存在といえます。
この章では、介護チームにおける介護福祉士の立ち位置や、ケアマネージャー、看護師、他の介護職員、多職種、そして利用者の家族との具体的な連携方法について解説します。
それぞれの専門性を活かし、情報を共有しながら協力することで、利用者一人ひとりに合わせた質の高いケアを提供することが可能になります。
チームで支え合うことの重要性を理解しましょう。
介護チームにおける介護福祉士の立ち位置と責任
介護チームにおいて、介護福祉士は利用者と最も近い距離で関わる現場のリーダー的存在です。
専門的な知識と技術に基づき、日々のケアの中心を担う重要なポジションにあります。
介護福祉士の主な責任は、ケアマネージャーが作成したケアプランに基づき、質の高い介護サービスを実践することです。
利用者の状態変化を観察し、その情報を正確に他の専門職へ伝達するパイプ役としての役割も重要になります。
さらに、経験や知識を活かして他の介護職員へ指導や助言を行い、チーム全体のケアの質を高めることも期待されます。
厚生労働省の調査(※1)によると、介護福祉士の約66%が正規職員として働いており、安定した立場で責任ある業務を任されることが多いです。

介護福祉士って、チームの中で具体的にどんなことをするの?

利用者さんのケアの中心となり、他の専門職をつなぐ、現場の司令塔のような役割を担います。
介護福祉士は、単に介護業務を行うだけでなく、チーム全体の動きを見ながら、より良いケアを提供するための調整役としての責任も負っています。
その働きが、ケアの質を直接左右するといっても過言ではありません。
※1 出典: 社会福祉振興・試験センター「介護福祉士等現況把握調査の結果について」(平成20年
ケアマネージャー(介護支援専門員)との連携と情報共有
ケアマネージャー(介護支援専門員)とは、利用者が適切な介護サービスを受けられるように、ケアプラン(介護サービス計画)を作成したり、サービス事業者との連絡調整を行ったりする専門職です。
介護福祉士とケアマネージャーの密接な連携は、質の高いケアを提供する上で欠かせません。
具体的には、介護福祉士は日々のケアを通じて得た利用者の心身の状態や生活状況、意向などの詳細な情報をケアマネージャーに報告します。
この情報は、ケアプランの見直しや更新に不可欠です。
例えば、「最近、食事の量が減ってきた」「歩行時にふらつくことが増えた」といった具体的な観察結果を伝えることで、ケアマネージャーはより実情に合ったプランを作成できます。
また、サービス担当者会議では、介護福祉士は現場の視点から意見を述べ、ケアプランが利用者にとって本当に適切なものになるよう貢献します。
連携のポイント | 具体的な内容 |
---|---|
情報共有 | 利用者の心身状況、生活の変化、意向などの報告 |
ケアプランへの協力 | 現場の視点からの情報提供、プラン内容に関する意見交換 |
サービス担当者会議 | 現場の代表としての意見表明、多職種との情報交換 |
連絡・調整 | サービス内容の確認、緊急時の連携 |
このように、介護福祉士とケアマネージャーが日頃から綿密なコミュニケーションを取り、情報を共有することで、利用者一人ひとりに最適なケアプランに基づいた、一貫性のあるサービス提供が実現します。
看護師との協働・医療的視点との連携を行う
介護施設や事業所では、看護師との連携も非常に重要です。
特に、利用者の健康管理や医療的なケアが必要な場面において、介護福祉士と看護師の協働は欠かせません。
介護福祉士は、日々のケアの中で利用者のバイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸など)の測定補助や、皮膚の状態、食事・水分摂取量、排泄状況などを観察し、変化があれば速やかに看護師に報告します。
例えば、「微熱が続いている」「顔色が悪い」「普段と違う訴えがある」などの情報は、病気の早期発見や重症化予防につながる重要なサインです。
また、看護師の指示のもと、インスリン注射の準備や経管栄養の準備、喀痰吸引の実施(研修を受けた場合)など、医療的なケアの一部を担うこともあります。
服薬管理においても、看護師と連携し、利用者が確実に薬を服用できるようサポートする役割を果たします。
連携のポイント | 具体的な内容 |
---|---|
健康状態の観察と報告 | バイタルサイン、皮膚状態、食事・排泄状況などの変化を報告 |
医療的ケアの補助 | 看護師の指示に基づく、経管栄養準備、喀痰吸引、服薬介助など |
緊急時の対応 | 急変時の迅速な報告と、看護師の指示に従った初期対応 |
情報共有 | 利用者の既往歴、アレルギー、現在の健康課題に関する情報の共有と確認 |
介護福祉士が医療的な視点を持つ看護師と緊密に連携し、情報を共有することで、利用者のわずかな体調変化も見逃さず、迅速かつ適切な対応が可能になります。
これにより、利用者は安心して日々の生活を送ることができ、医療と介護が一体となった質の高いケアが提供されます。
他の介護職員(ヘルパー等)との協力と役割分担
介護現場では、介護福祉士資格を持つ職員だけでなく、ホームヘルパー(訪問介護員)や資格取得を目指している職員など、様々な立場の介護職員が働いています。
介護福祉士は、これらの職員に対して指導的な役割を担い、チーム全体のケアの質を維持・向上させることが求められます。
介護福祉士は、自身の持つ専門知識や技術を活かし、経験の浅い職員や無資格の職員に対して、具体的な介助方法や利用者とのコミュニケーションの取り方などを実務を通じて指導します。
また、チームリーダーとして、その日の業務内容や利用者の状況に応じて、他の介護職員への適切な業務の割り振りを行うことも重要な役割です。
例えば、経験の浅い職員には比較的負担の少ない業務を担当してもらい、徐々にステップアップできるよう配慮するなど、個々の能力に応じた役割分担を考えます。
ケアカンファレンスなどを通じて、ケアの方針や注意点をチーム全体で共有し、どの職員が対応しても一定水準以上のケアが提供できるよう、ケアの標準化を図ることも大切です。
厚生労働省の資料(※2)によると、働きながら介護職員初任者研修や介護福祉士の資格を取得することも可能であり、介護福祉士はそうしたキャリアアップを目指す職員の良き相談相手にもなります。

ヘルパーさんとはどう違うの?

介護福祉士は国家資格を持つ専門職として、ヘルパーさんたちを指導したり、チームをまとめたりする役割があります。
介護福祉士がリーダーシップを発揮し、他の介護職員と協力・連携することで、チーム全体のスキルアップにつながります。
その結果、利用者に対してより安全で質の高い、均一なケアを提供することが可能となるのです。
※2 出典: 厚生労働省「福祉・介護の仕事に関する意識調査と実態」
多職種(リハビリ専門職、栄養士等)との連携の実際
介護の現場では、ケアマネージャー、看護師、介護職員以外にも、利用者の生活全体の質の向上を目指して、様々な専門職が関わっています。
介護福祉士は、これらの多職種とも連携し、それぞれの専門性をケアに活かすための橋渡し役となります。
具体的には、以下のような専門職との連携が挙げられます。
連携する専門職 | 連携内容の例 | 期待される効果 |
---|---|---|
理学療法士(PT) | リハビリ計画の共有、日常生活動作(ADL)訓練の連携、福祉用具の選定相談 | 身体機能の維持・向上、安全な移乗・移動 |
作業療法士(OT) | 応用的な日常生活動作(IADL)訓練の連携、生活環境の調整、精神面のサポート | 利用者らしい生活の実現、認知機能の維持 |
言語聴覚士(ST) | 嚥下(飲み込み)訓練の連携、食事形態の相談、コミュニケーション手段の検討・支援 | 安全な食事摂取、意思疎通の円滑化 |
栄養士・管理栄養士 | 食事形態や量の調整、栄養状態の共有、嗜好への配慮、食事に関する助言 | 低栄養の予防・改善、食欲増進 |
生活相談員・支援相談員 | 利用者や家族からの相談内容の共有、入退所・利用調整に関する連携、関係機関との連絡 | 悩みや問題の解決、スムーズな移行支援 |
例えば、理学療法士が立案したリハビリ計画に基づき、介護福祉士が日中の離床を促したり、歩行訓練を見守ったりします。
また、栄養士と連携し、利用者の嚥下状態に合わせた食事形態(刻み食、ミキサー食など)で提供したり、嗜好に配慮したメニューを検討したりすることも重要です。
生活相談員からは、家族が抱える悩みや経済的な問題などの情報共有を受け、日々のケアに活かすこともあります。
このように、介護福祉士が各専門職と日常的に情報交換を行い、それぞれの専門的な視点やアセスメント結果を理解し、日々のケアプランに反映させることで、単なる身体的な介助にとどまらない、利用者の生活全体を支える全人的なケアが実現します。
利用者の家族とのコミュニケーション方法
介護福祉士にとって、利用者本人だけでなく、そのご家族との良好な関係を築くことも非常に重要な仕事の一つです。
家族との円滑なコミュニケーションは、利用者の安心感につながり、より質の高いケアを提供するための基盤となります。
コミュニケーションの基本は、丁寧な報告・連絡・相談です。
日々のケアの中で観察した利用者の様子(食事量、活動内容、表情、睡眠状況など)や、小さな変化、楽しかった出来事などを具体的に伝えることで、家族は離れていても利用者の状況を把握でき、安心感を得られます。
連絡ノートや申し送り簿を活用するのも有効な方法です。
また、家族からの相談や要望に真摯に耳を傾ける姿勢も大切です。
「最近、食欲がないようで心配」「面会時に少しでも歩く練習をさせてほしい」といった家族の思いを受け止め、ケアプランに反映できることは積極的に取り入れ、難しい場合はその理由を丁寧に説明し、代替案を一緒に考えます。
ケアの方針や内容について、専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明し、理解と同意(インフォームドコンセント)を得ることも重要です。
厚生労働省の資料(※2)でも、介護の仕事のポジティブイメージとして「人との交流にやりがい」が挙げられており、家族との関わりもその一つと言えるでしょう。
コミュニケーションのポイント | 具体的な方法・心がけ |
---|---|
情報共有(報告) | 日々の利用者の様子(体調、活動、表情など)を具体的に伝える、連絡ノートの活用 |
傾聴(相談) | 家族の不安や要望に耳を傾ける、共感的な態度で接する |
説明と同意 | ケア内容や方針を分かりやすく説明する、専門用語を避ける |
信頼関係の構築 | 誠実な対応、約束を守る、プライバシーへの配慮 |
家族の尊重 | 家族の介護負担や気持ちを理解しようと努める、ねぎらいの言葉をかける |
利用者にとって、家族は最も身近で大切な存在です。
介護福祉士が家族との間に信頼関係を築き、良きパートナーとして協力していくことで、利用者は住み慣れた環境や施設で、より安心して穏やかに生活を送ることができます。
※2 出典: 厚生労働省「福祉・介護の仕事に関する意識調査と実態」
介護福祉士のリアルなやりがいと大変さは?向いている人の特徴を紹介
介護福祉士の仕事は、大きなやりがいを感じられる一方で、大変さも伴います。
この両面を理解しておくことは、長く仕事を続けていく上で非常に重要になります。
ここでは、仕事を通じて得られる「やりがい」や「専門職としての成長実感」、そして向き合うことになる「体力的な負担」や「精神的なきつさ」について詳しく見ていきます。
加えて、「介護福祉士に向いている人の特徴」や、資格を持っていても「できない業務範囲」についても解説します。
これらのリアルな情報を知ることで、介護福祉士という仕事への理解を深め、自分自身の適性を考えるきっかけとなるはずです。
利用者からの感謝と信頼が仕事を通じて感じるやりがい
介護福祉士の仕事におけるやりがいの多くは、利用者の方やそのご家族との関わりの中にあります。
日々の身体介護や生活援助を通じて、相手の生活を直接的に支えることができるのは、この仕事ならではの魅力です。
特に、利用者の方から「ありがとう」「助かるよ」といった感謝の言葉を直接いただいた時や、根気強く関わる中で少しずつ信頼関係が築けていく過程には、大きな喜びを感じます。
ケアを通じて利用者の表情が明るくなったり、できなかったことができるようになったりする変化を間近で見られることも、日々のモチベーションにつながるでしょう。

直接「ありがとう」って言われると、やっぱり嬉しいのかな?

はい、利用者さんからの感謝の言葉は、何よりの励みになりますよ
このように、人の役に立っているという実感と、築き上げた信頼関係こそが、介護福祉士にとってかけがえのないやりがいなのです。
経験を積むことで介護の専門職としての成長を実感できる
介護福祉士は、経験を積むことで専門職として成長を実感できる仕事です。
現場での実践はもちろん、研修への参加などを通じて、常に新しい専門知識や介護技術を学ぶ機会があります。
最初は戸惑うことが多い場面でも、経験を重ねるうちに自信を持って対応できるようになります。
例えば、認知症の方への対応や、難しいコミュニケーションが求められる場面で、学んだ知識や技術を活かしてうまく関われた時などは、自身の成長を強く感じられる瞬間でしょう。
多くの事業所では、資格取得支援制度や内部研修が用意されており(令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果より、約75%の事業所で研修受講支援等を実施)、キャリアアップを目指せる環境も整っています。

学校で学んだことが、現場でどう活かせるんだろう…

知識と実践を結びつけながら、着実にスキルアップできますよ
日々の業務を通じてスキルを高め、より質の高いケアを提供できるようになる過程は、専門職としての大きなやりがいにつながります。
利用者の生活に向き合う大変さ。体力的な負担の詳細とその対策を紹介
介護福祉士の仕事内容には、体力的な負担が伴う側面もあります。
特に、移乗介助(ベッドから車椅子へ移る際などの支え)や入浴介助、排泄介助といった身体介護では、利用者の体を支えたり、動かしたりする場面が多くあります。
これが「介護福祉士はきつい」というイメージにつながることもありますが、近年では体力的な負担を軽減するための対策も進んでいます。
例えば、体を持ち上げずに移動させるためのスライディングボードや、利用者を抱え上げずに浴槽に入れるリフトなど、福祉用具の活用が推奨されています。
また、腰に負担の少ない介助技術(ボディメカニクス)を学ぶことも重要です。
対策 | 具体内容 |
---|---|
福祉用具の活用 | リフト、スライディングボードなどの利用 |
技術の習得 | ボディメカニクスに基づいた介助技術の習得 |
職場環境 | 複数人での介助体制、休憩時間の確保 |
自己管理 | 定期的なストレッチ、十分な休息 |

やっぱり、力仕事が多いイメージで腰とか痛めそうで不安…

正しい知識と技術、そして用具を使えば負担は軽減できます
大変さはありますが、正しい知識と技術を身につけ、職場の環境を整えることで、体力的な負担を最小限に抑えながら働くことが可能です。
精神的なきつさとストレスマネジメント
介護の現場では、体力的な負担だけでなく、精神的なきつさを感じる場面もあります。
厚生労働省の発表でも、離職理由として「精神的にきつい」が挙げられることがあります。
例えば、認知症に伴う行動・心理症状への対応に悩んだり、意思疎通が難しい利用者とのコミュニケーションに苦労したりすることがあります。
また、看取りケアに関わる際には、人の死と向き合う精神的な負担も伴います。
利用者やその家族との連携において、板挟みになるような状況も起こり得ます。
しかし、これらのきついと感じる場面も、一人で抱え込む必要はありません。
介護の仕事はチームワークが基本です。
困ったことや悩みがあれば、同僚や上司、ケアマネージャーなどの他職種に相談し、役割分担しながら解決策を探ることが大切です。
適切なストレスマネジメント(気分転換の方法を見つける、休息をしっかり取るなど)も重要になります。

人の生死に関わる場面もあるって聞くけど、精神的に大丈夫かな…

一人で抱え込まず、同僚や上司と相談することが大切です
精神的な負担も介護のリアルな一面ですが、チームで支え合い、適切に対処していくことで乗り越えていくことができます。
介護福祉士に向いている人の特徴は思いやりと観察力がある人
介護福祉士に向いている人に共通する特徴として、まず「思いやり」の心を持っていることが挙げられます。
相手の立場や気持ちを想像し、寄り添う姿勢は、高齢者や障害を持つ利用者と信頼関係を築く上で不可欠です。
単に優しいだけでなく、相手が何を求めているのか、どのような状況にあるのかを注意深く「観察」する力も非常に重要となります。
利用者の中には、自分の意思や状態をうまく言葉で表現できない方も少なくありません。
表情や声のトーン、ちょっとした仕草の変化など、非言語的なサインから相手のニーズを汲み取る観察力が求められます。

自分って、介護福祉士に向いてるのかな?

人の役に立ちたいという気持ちと、相手をよく見ることが大切です
相手を尊重する「思いやり」と、細やかな変化に気づく「観察力」。
この二つは、質の高いケアを提供する上で土台となる大切な資質です。
コミュニケーション能力と体力も介護福祉士の素質に重要
介護福祉士に向いている人の資質として、「思いやり」や「観察力」と並んで、「コミュニケーション能力」と基本的な「体力」も重要です。
コミュニケーション能力は、利用者やその家族と良好な関係を築くだけでなく、チームワークでケアを進める上でも不可欠です。
看護師、ケアマネージャー、リハビリ専門職など、様々な職種と連携(多職種連携)し、情報を共有しながら役割分担してケアを提供するため、円滑なコミュニケーションが求められます。
「介護福祉士等現況把握調査」によると、現職者の約8割がチームワークを重視し、連携を大切にしています。
また、身体介護(入浴介助、食事介助、排泄介助、移乗介助など)を日々行うためには、一定の体力も必要です。
無理なく業務を続けるためには、日頃からの体調管理が大切になります。

人と話すのは好きだけど、体力にはあまり自信がないかも…

コミュニケーション力は大きな武器です。体力は日々の業務で自然とついてきますよ
多様な人々と関わるためのコミュニケーション能力と、日々の業務を支える体力。
これらも介護福祉士として活躍するために欠かせない要素と言えるでしょう。
介護福祉士はインスリン注射などの医療行為は業務上できない
介護福祉士は国家資格を持つ介護の専門職ですが、行える業務には範囲があります。
特に、医療行為とされるものは原則として行うことができないことになっています。
医療行為とは、医師や看護師などの医療従事者でなければ行えない、病気の診断や治療に関する行為を指します。
具体的には、インスリン注射、血糖測定、褥瘡(床ずれ)の処置、摘便(てきべん:指で便をかき出すこと)などが該当します。
これらは医療的な判断や専門的な技術が必要となるため、介護福祉士の業務範囲外です。
ただし、例外もあります。
2012年の法改正により、一定の研修を受けた介護福祉士は、喀痰吸引(かくたんきゅういん:たんを吸い取ること)や経管栄養(けいかんえいよう:チューブを通して栄養を補給すること)といった特定の医療的ケアを実施できるようになりました。
行為の種類 | 具体例 | 備考 |
---|---|---|
診断・治療行為 | 病状の診断、投薬判断 | 医師の業務 |
医療処置 | インスリン注射、摘便 | 原則として看護師等の業務 |
医療処置 | 褥瘡の処置 | 医師・看護師の指示のもと、限定的な範囲のみ |
(条件付き可) | 喀痰吸引、経管栄養 | 研修修了者のみ実施可能 |

どこまでが介護福祉士の仕事で、どこからが医療の範囲なの?

医療行為はできませんが、研修で対応できる範囲は広がっています
介護福祉士はあくまで生活援助や身体介護の専門家であり、医療行為との境界線を理解しておくことが重要です。
介護福祉士は介護専門職としての唯一の国家資格!資格の意義と取得方法は?
この資格を持つことは、専門的な知識と技術を有していることの証明となり、利用者さんやご家族からの信頼、そして社会的な評価につながります。
介護福祉士を目指す上で、資格の取得はスタートラインであり、最も重要なステップです。
取得することで、介護職員としての中核的な役割を担うことが期待され、任される業務の幅も広がります。
資格取得には、主に3つのルートがあります。

資格ってどうやって取るんだろう?

主なルートは3つありますよ
国家資格である介護福祉士を取得するには、定められた要件を満たし、国家試験に合格する必要があります。
資格の意義と具体的な取得方法、国家試験の概要と対策、気になる給料事情、キャリアアップの可能性、求人の探し方、そして高齢化社会における将来性について詳しく解説します。
資格取得のルート解説(実務経験・養成施設・福祉系高校)
介護福祉士国家試験の受験資格を得るには、主に以下の3つのルートがあります。
ご自身の状況に合わせて最適なルートを選ぶことが重要です。
- 実務経験ルート: 介護現場での実務経験を積みながら資格取得を目指す方法です。具体的には、対象となる施設や事業所で従業期間3年以上(かつ従事日数540日以上)の実務経験を積み、さらに実務者研修を修了することで受験資格が得られます。
- 養成施設ルート: 高校卒業後などに、国が指定する介護福祉士養成施設(専門学校、短大、大学など)で1年以上学び、卒業することで受験資格が得られます。専門的な知識や技術を体系的に学ぶことができます。
- 福祉系高校ルート: 福祉系の学科がある高校で指定された科目・単位を修めて卒業した場合、または特例高校等を卒業後に実務経験を積むことで受験資格が得られます。
資格取得ルート | 主な対象者 | 必要な条件 |
---|---|---|
実務経験ルート | 介護現場で働いている方 | 従業期間3年以上(実働日540日以上)+実務者研修修了 |
養成施設ルート | 高校卒業後など、専門的に学びたい方 | 指定養成施設の卒業(1年以上) |
福祉系高校ルート | 福祉系の高校・特例高校等で学んでいる方 | 指定カリキュラム修了または卒業(+実務経験9ヶ月以上※) |
※福祉系高校(2009年度以降入学者)の場合
これらのルートを経て、介護福祉士国家試験に合格することで、正式に介護福祉士として登録されます。
介護福祉士の国家試験の合格基準は?難しい?概要と対策
介護福祉士国家試験は、年に1回、通常1月下旬に筆記試験が実施されます(実技試験は養成施設ルート等以外で筆記試験合格後に実施される場合がありましたが、現在は実務者研修等で実技能力が担保されるため原則免除)。
試験科目は、人間の尊厳と自立、介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程、発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、こころとからだのしくみ、医療的ケア、総合問題など11科目群と広範囲にわたります。
加えて、試験科目11科目群すべてにおいて得点があることが必要です。
近年の合格率は約70~80%台で推移していますが、油断は禁物です。
効果的な対策としては、過去問題を繰り返し解き、出題傾向を把握することが基本です。
また、各科目をバランスよく学習し、苦手分野を作らないようにしましょう。
模擬試験などを活用して、時間配分や本番の雰囲気に慣れておくことも有効です。
計画的に学習を進めることが合格への鍵となります。
介護福祉士の給料・年収事情は?
介護福祉士の給料は、経験年数や勤務する施設形態、地域、役職、また夜勤の有無などによって異なりますが、処遇改善が進められている分野です。
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員処遇改善加算等を取得している事業所に勤務する介護福祉士(常勤)の平均給与額は約33万円でした。
これは、他の介護職員と比較しても高い水準にあります。
調査年 | 対象 | 平均給与額(月額・常勤) |
---|---|---|
令和3年 | 介護福祉士(加算取得事業所) | 328,720円 |
令和2年 | 介護福祉士(加算取得事業所) | 322,680円 |

給料って、やっぱり気になるな…

経験やスキルでアップしますし、国の処遇改善も進んでいます
勤続年数が上がるにつれて給与も上昇する傾向にあり、また「介護職員処遇改善加算」や「介護職員等特定処遇改善加算」といった制度により、さらなる賃上げが図られています。
給与だけでなく、福利厚生や手当なども含めて総合的に判断することが大切です。
認定介護福祉士や管理職へ!専門職としてのキャリアアップ
介護福祉士の資格取得はゴールではなく、専門職としてのキャリアのスタートです。
経験を積みながら、さらに上位の資格や役職を目指すことが可能です。
代表的なキャリアアップの道として、認定介護福祉士があります。
これは、介護福祉士としてより質の高い実践力を持ち、介護チームのリーダーや教育指導的役割を担える人材を養成するもので、研修受講と認定審査を経て取得できます。
厚生労働省の調査によると、介護福祉士の63.0%が正規職員として働いており、安定した立場で責任ある業務を任されるケースが多く見られます。また、ケアプランを作成するケアマネージャー(介護支援専門員)も人気のキャリアプランです。
介護福祉士としての実務経験を5年以上積むことで、介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格が得られます。
さらに経験を重ね、リーダーや主任、サービス提供責任者、施設の管理者(施設長)といった管理職への道も開かれています。
自身の適性や目標に合わせて、様々なキャリアプランを描くことができます。
求人の探し方と自分に合った職場の見つけ方
介護福祉士の求人は、様々な方法で見つけることができます。
公共の職業紹介機関であるハローワークは、地域密着型の求人が多く見られます。
都道府県の福祉人材センター・バンクも、福祉・介護分野に特化した相談や紹介を行っており、頼りになる存在です。
自分に合った職場を見つけるためには、給与や勤務時間といった条件面だけでなく、職場の雰囲気や理念、教育体制などをしっかり確認することが重要になります。
求人票の情報だけでは分からない部分も多いため、可能な限り施設見学をしたり、説明会に参加したりすることをおすすめします。
実際に働く職員の方の話を聞いたり、職場の様子を直接見たりすることで、入職後のミスマッチを防ぐことができます。
焦らず、複数の選択肢を比較検討しましょう。
高齢化社会における介護福祉士の必要性と将来展望
日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進行しており、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、2040年には高齢者人口がピークを迎えると推計されています。
それに伴い、介護サービスの需要はますます増加し、質の高い介護を提供できる介護福祉士の必要性は今後さらに高まっていきます。
介護ロボットやICT技術の導入も進んでいますが、利用者さんの心に寄り添い、個別性を尊重したケアを提供できる専門職の役割は、機械には代替できません。
介護福祉士は、高齢者や障害のある方の生活を支えるだけでなく、ご家族の相談に乗ったり、地域包括ケアシステムの担い手として多職種と連携したりするなど、その活躍の場はますます広がっていくでしょう。
社会的なニーズが高く、安定した職業であり、専門性を高めることで多様なキャリアを築ける将来性のある仕事です。
よくある質問(FAQ)
まとめ
この記事では、介護福祉士という仕事について、具体的な業務内容や働く施設による違い、1日のスケジュール例、チーム内での大切な役割、さらにはリアルなやりがいと大変さ、資格取得の方法から将来性まで、詳しくお伝えしました。
- 施設ごとに異なる仕事内容と1日の流れ
- 身体介護、生活援助、相談・助言という主な業務
- 多職種や家族と協力するチームケアの重要性
- 仕事のやりがい・大変さと国家資格としての将来性
介護福祉士の仕事の全体像が見えてきたでしょうか。
この記事を参考に、あなた自身が目指す介護福祉士像や、自分に合った働き方を見つけるための一歩を踏み出してくださいね。